北海道における
中高年ひきこもり支援の現状と
私たちの取り組み
中高年ひきこもり支援の現状と
私たちの取り組み
北海道は、九州・中国・四国を合わせたほどの広さを持ち、14の(総合)振興局によって地域運営がなされています。 このような広域な環境では、都市圏と地方圏の間に社会資源や交通インフラの格差が生まれやすく、 特に地方に暮らすひきこもり当事者やその家族は、孤立しやすい状況に置かれています。
ひきこもりの高年齢化が進む中で、40歳以上の中高年層の多くは長期にわたり無職・無経歴となり、 親と同居しながら生活しています。親が高齢化し、介護や死去によって収入が途絶えることで、 当事者の生活困窮が一気に表面化するケースも少なくありません。 また、年齢的・心理的・体力的なハードルから、札幌市などの都市部にある支援窓口へ足を運ぶことも困難です。

こうした背景を受け、私たちNPOでは、以下のような支援活動を展開しています。
- 返信を求めない手紙によるピア・アウトリーチ活動: 心身に負担なくつながることを目的とした、当事者向けの丁寧な声かけ。
- 安心して集える居場所づくり(当事者会・家族会): 同じ立場の人同士が安心して語り合える場を提供。
- ひきこもり経験を活かしたピアサポート活動: 当事者自身の経験が他者への支援にもつながるよう、役割や参加の機会を創出。
また、地域ごとに拠点を設けることで、専門的な相談窓口へつなぐ“ハブ”としての役割も担い、 行政や地元支援団体との連携を図りながら、ゆるやかにつながり続ける」支援ネットワークを広げています。
今後も、地域ごとの実情に応じて、個別のニーズに柔軟に応える複合的な支援を行い、 誰もが孤立せずに安心して暮らせる社会の実現が必要と考えます。
北海道における
中高年ひきこもり支援の新たな取り組み
中高年ひきこもり支援の新たな取り組み
— 広域特性に対応した多機能型支援拠点の設置 —
北海道では、親の介護施設入所や死別などにより、一人で生活する中高年のひきこもり当事者が増えつつあります。そうした方々が社会と切れ目なくつながり続けるための 「多機能型支援拠点」の設置・運営を、当NPOが担っています。
本事業では、広大な北海道を以下の 4ブロック に分け、それぞれの圏域に支援拠点を設けました。
- 道央圏:札幌市圏域
- 道南圏:函館市圏域
- 道北圏:旭川市圏域
- 道東圏:北見市圏域
各拠点では、単なる「居場所」機能にとどまらず、相談・学習機能を持たせ、手紙やICT(メタバースを含む)も活用することで、広域で孤立しがちな当事者のニーズに対応しています。
各拠点には中核団体を配置し、地域の支援機関とのネットワークを強化。地元の支援機関同士が連携し合うことで、包括的で継続的な支援体制を構築しています。
当NPOは、ひきこもり経験者がピアスタッフとして関わる当事者団体です。経験に基づく支援(ピアサポート)と専門職の連携により、制度の狭間にある中高年層にも実効性のある支援を提供しています。
この4拠点体制とネットワークにより、事業終了後も支援の継続と拡充を視野に入れた仕組みを構築。地域内の支援力向上と、住民への理解促進にもつながる取り組みです。



事業の概要と主な内容
北海道における中高年ひきこもり支援のため、
広域特性に対応した多機能型支援拠点を設置・運営しました。
1. 事業推進委員会の設置・運営
事業を計画的に進めるため、NPO、家族会、大学、企業など10団体による事業推進委員会を設置し、Zoom会議を活用して定期的に開催しました。 現地窓口団体との連携会議も併せて実施しました。
2. 北海道内4ブロックの支援拠点運営
道央(札幌)、道南(函館)、道北(旭川)、道東(北見)に支援拠点を設置し、当事者会や家族会、話題提供学習会を実施。地域ニーズに応じた柔軟な支援と、 後援団体との連携により、公共施設の活用や参加促進を図りました。
3. ICT(メタバース)の活用
地理的に支援が届きにくい周辺地域に対して、アバターで参加できる2次元バーチャル空間(ovice)を活用し、匿名・顔出し不要で安心して交流できる場を提供。 機材貸与の支援も行いました。
4. 手紙(絵葉書)によるピア・アウトリーチ
インターネット利用が難しい中高年層には、月2回の絵葉書を送付するアウトリーチを実施。「返信不要」の安心感と、心の距離感を大切にしながら、緩やかに支援を届けました。
5. 支援拠点ワークショップ・情報交換会
2025年1月に札幌で公開型の情報交換会を開催。支援拠点の担当者や関係者が一堂に会し、各地域の取り組みと課題を共有。今後の支援体制づくりに向けた意見交換を行いました。
独自志向性・孤独感と
ひきこもり年数の関係
ひきこもり年数の関係
本研究では、独自志向性・孤独感・ひきこもり年数の関連性を調査しました。
主な結果と示唆
- 3つの要素間に有意な相関は認められなかった。
- ひきこもり年数が長いからといって、一人時間への適応が進むとは限らない。
- 孤独を好む傾向があっても、孤独感を感じる人がいることが明らかとなった。
- 支援には、個々の志向性に応じた柔軟な対応が必要である。
メタバースの活用と支援の可能性
本研究で実施した広域型支援拠点では、メタバースが対面支援の補完手段として有効であることが確認されました。
今後の支援策においては、一律の方法ではなく、孤独の感じ方や志向性に応じた個別対応が求められます。

NPO法人レター・ポスト・フレンド相談ネットワーク
理事長 田中 敦(Atsushi Tanaka)