本事業の目的

ひきこもり当事者は支援を受ける側の人として、専門職の憶測や見立てによる判断で当事者になり代わり語られていましたが、ひきこもりの経験的知識は支援者がもつ専門的知識と同格又はそれ以上のリアリティを伴っています。

本事業では、ひきこもり経験を有するピアサポーターを活用している基礎自治体や今後実施を検討している基礎自治体と話し合いピアサポーターを活用した支援について、企画、実践、調査及び評価を実施し、これからの全国の基礎自治体の参考となる有用なひきこもりピアサポート活動のプロセスモデルを構築することを目的に行いました。

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経緯と現在の状況

本事業は令和3年度厚生労働省生活困窮者就労準備支援事業費等補助金社会福祉推進事業として2021年9月から事業を開始し2022年3月に終了しました。

主な事業は次の3点から構成されています。
「手紙によるピアアウトリーチ調査研究」
「新規基礎自治体調査研究」
「ピアサポーターを活用した先行実践例調査研究」。

長期化する新型コロナ禍の影響により、当初の計画行程から大幅に進行がずれ込む結果となりましたが、感染防止策に準拠した調査研究を可能な限り継続して実施しました。

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調査・研究の概要

①「手紙によるピアアウトリーチ調査研究」では当NPOのピアサポーターが当事者に絵葉書を郵送した実践に対する利用者評価アンケート調査の実施。

②「新規基礎自治体調査研究」では全国の基礎自治体で、ピアサポート活動に関心を寄せ、今後導入を検討している2地域の自治体で活動するNPO法人など現地関係者との聞き取り、並びにピアサポーター8名によるオンライン座談会の実施。

③「ピアサポーターを活用した先行実践例調査研究」ではひきこもりピアサポーターを活用して事業を実施している5つの団体を選定しヒアリング調査を実施。その他、ピアサポートの実践活動を支えるための実務者研修会(基礎編・応用編)を2回実施しました。

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調査結果詳細
(PDF・電子書籍化)

「ひきこもりピアサポーターによる当事者性を活かしたひきこもり支援に関する調査研究事業報告書」(A4判全85頁カラー600部印刷製本)に本事業の内容とその成果についてまとめました。

報告書は全国75箇所に所在するひきこもり地域支援センターのほか支援機関を中心に配布していきます。

また事業の広報啓発、成果公表等にあたって必要となる専用WEBサイトを当NPOホームページ内に構築し、報告書は電子書籍として閲覧ができます。

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調査結果結論(まとめ)

NPO法人レター・ポスト・フレンド相談ネットワーク理事長 田中 敦
(Atsushi Tanaka)

ひきこもりの経験的知識がもたらすピアサポートの有効性の一面が明らかにされました。

手紙によるピアアウトリーチ利用者からは「今後も継続してほしい」と希望する利用者は全体の8割にも達し、ピアサポートを実施する5つの支援団体機関への聞き取り調査からは、専門職スタッフと協働で当事者がピアサポーターとして雇用されている団体などの好事例を調査することができました。オンラインによる支援団体機関との聞き取りではピアサポーターが訴える声に真摯に耳を傾け支援者が当事者から学ぶ場面にもなっていました。

ただ残念ながらピアサポートは社会での認知度が低いため、ひきこもり経験に正当な対価や報酬を保障できていない課題も残っています。

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所感(全体を通してのまとめ)

ピアサポートのピア(peer)は「仲間」より「似た経験をしている人」と表現したほうがよいでしょう。

仲間という距離感の近い存在よりもゆるく付き合える存在。ピアサポーターはひきこもり経験を活かし、現在悩んでいる当事者と交流しています。

その良さを基礎自治体、民間支援団体の専門職の方々に知ってもらえる機会になったのではないでしょうか。

本事業ではピアサポーターの生の声がより多く反映されています。彼らも悩みながら紆余曲折して活動を続けています。

専門職がときには後方的な支えをしながら、ひきこもりの経験的知識と支援者の専門的知識を共に活かしてこれからの支援に役立ててほしいと願います。

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