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い生活をされて自室で読書などをして過ごしてきた。両親が来談されたことがきっかけでIさんも来

てもらえるようになった。将来の不安は語られたが就職の話はまったくされない。誠実で少しシニカ

ルな人柄だった。グループワークへの参加を案内したが「傷のなめ合いだ。行きたくない」と断られ

た。これが最初の出会いだった。 

 

4-1.ボランティア体験 

Iさんは真面目な人で社会の役に立ちたいと思う気持ちが凄く感じられた。本が好きで市立図書館

に依頼して特別講座「図書館ボランティア体験講座」を企画した。この内容であればIさんも来ても

らえると思った。また図書館ボランティアに興味がある人が複数いることを予測して企画した。Iさ

んも参加してくれることになった。最初は数年続けて乱雑に並んでいる書籍を並べ替え整理するボラ

ンティアとして協力してもらった。図書館としては助かるのでIさんは月に数回図書館に行き数年間

継続してもらったが無報酬だった。役に立ちたちという思いがあり、何かをする能力があるが一般就

労は難しいIさんに活躍できる企画がないかと思った。利用者には障害者手帳を取得する人もいるが、

そうでない人は一般就労へ向けたいろんな機会があればよいと思った。先ほど「出番」と「役割」の

話があったが、Iさんにもあればよい。ボランティアはしてもらっているが、もう少し報酬が得られ

るような活動をする機会をつくれないか。そういう人たちが他にも複数いた。 

 

4-2.「堺市ユース・ピアサポーター」養成派遣事業 

厚生労働省が平成25年度から「ひきこもりサポーター養成研修事業」を行うことになった。厚生

労働省のホームページに掲載されている内容によれば「同事業は、ひきこもりの経験者を含むピアサ

ポート」なのでひきこもりの本人とその家族がサポーターになることができる。このサポーターを家

庭訪問に派遣することができる。家庭訪問と記載されているが、家庭訪問でなくてもよいと解釈もで

きる。実際、訪問活動は難しいかもしれない。もちろん行ってもらえる人はよいが、私たちとしては

例えばIさんに家庭訪問は難しいだろうと思うなかで、本人が何かをしてそれに対する報酬を公的な

予算で支給できる機会だととらえ「堺市ユース・ピアサポーター養成派遣事業」を開始した。この事

業はIさんのように相談に来られているなかで、社会参加を目指しているが仕事をされてなくて時間

がある人、ボランティア活動をされている人が数回の養成講座を受講後活動に入る。何をするのかと

いうと家庭訪問ではなくて、企画ミーティング活動をしてもらう。これはSSGで一期一会方式として

続けてきたので一回限りのイベントを企画してもらう。そのイベントにいろんな人が来てもらうとい

う計画案をしている。 

Iさんに役に立つ機会になるので企画ミーティング活動に誘ったら「参加したい」と言ってくれた。

ちなみにこの会議に参加してみなさんで話し合ってもらうと一回につき謝礼金2,950円を支払ってい

る。このお金の半分は堺市、半分は国の補助金から支出されている。 

 

4-3.安心してスベれるサポーター会議 

企画ミーティング活動のときに初めてひきこもりという言葉を利用者に言っている。つまりこころ

の健康センターではひきこもり地域支援センターもやっているが、そういう看板はどこにも掲げてい

ない。だから家族は広報でひきこもりという言葉をみて来談されているが、本人が個人面接に訪れた

ときにひきこもりという言葉を数える回数でしか使ったことがない。本人が「自分はひきこもりです」

と言って来談する場合もあるが、とりあえず親に言われて来た人も多いため、その人たちに「あなた

はひきこもりですよ」などと話すと「自分はひきこもりではない」と来なくなる場合もあるので、あ

えてひきこもりという言葉を使わない。そういうなかでSSGを続けてきたがグループ名に「ひきこも

りの~」といったタイトルはない。具体的に何をするグループなのかがわかるタイトルになっている。