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って講師の話を聴くだけ、観察しているだけでもよい。それからマニアックな少人数企画にもチャレ
ンジした。例えば「ミャンマーの仏教について」という講座や、遊戯王も複数の部屋を使用して好き
な遊びに参加できるようにしたこともある。
3-5.緊密すぎないゆるやかな雰囲気
なぜ多くの人が参加してくれたのかについてあと付けの理屈だが、ひきこもり状態で相談に来られ
る人で、働きたい気持ちがまったくない人はあまりいないと思うが、働きたい気持ちがあるとしても
仕事に就くことはハードルが高いため、仕事に行きにくい人がこういうグループワークに参加する。
一方で私たちが考えてきた初期のグループは、何かしたい気持ちは働きたい気持ちよりも多いように
思うが、一方で雰囲気ができた既存の集団に自分が入りにくい状況がある。一方で何かしたい気持ち
よりも自分の興味関心があり何かをしたい気持ちの方が高いだろう。
例えばデュエルが好きな人がデュエルの大会に参加したいという気持ちがあって、雰囲気のできた
既存の集団よりもその都度案内されるプログラムの方が入りやすいのではないかなど、ハードルの高
さと何かしたいという気持ちが同じくらいあるので、参加してもらえるのではないかと考えた。
このような形式ですすめていくとSSGのグループの雰囲気はその場限りの雰囲気になるので、緊密
すぎないゆるやかな感じになる。毎回すべてのプログラムを案内されていないことは本人たちが理解
しているので、
「前回何で来なかったの」
「次回は参加するの」といったプレッシャーがない。なんと
なくお互いに「こんな人がいるな」というレベルの人間関係で全く自己開示がない。個人の事情を打
ち明ける人はない。「キャラ」が目立たず「いじり」がほとんどないという薄い人間関係である。た
だ雰囲気としては悪くないという感じになった。
3-6.当事者が講師になる
20代前半の男性でTさんという人がいて、小学校5~6年くらいから学校へ行けなくなり12年間ひ
きこもり状態が続いた。自室でアニメを見たりテレビゲームをやり過ごしていた。母子家庭で母親は
忙しくて相談する機会がなかったが知人の勧めで来談してその経過のなかでTさんも来談してもらえ
るようになった。電車やバスにあまり乗ったことがなかったが一緒に乗る練習をして、いろいろと出
かけるようになりグループにも参加してもらえるようになった。非常に実直で真面目な性格でインド
ア派だが好きなことには積極的で、やがてピアサポート活動にも参加するようになった。ハンドメイ
ドの手作り雑貨づくりにはまり、100円ショップで材料を購入して自宅でもつくっている。ハンドメ
イド雑貨屋の店主になりたい夢があり、創作プログラムの講師をやりたいという希望が出されたので
現在は講師も担当している。創作グループワークではフェルトでつくったパンダやクロワッサン、お
寿司をリアルに再現した作品をつくっている。講師として担当してもらったので謝礼金を支払ってい
る。
一期一会方式ではその場限りのイベントなのでスクール形式の講座ができる。その中で講座形式で
は基本的にその場の設定が大事だ。円座のような形式だと緊張するので、学校の先生の話を聞くよう
な形式をとる。その場が大切なので話す内容は何でもよい。最初はスタッフの趣味の話などしていた
が話題がなくなったため利用者に語ってもらうことにした。話してもらえそうな人に依頼し引き受け
てくれたら謝礼金を支払っている。サッカーが好きな人にサッカーの講座で話してもらったり自作パ
ソコンのつくり方を教えてくれる人もいた。
4. ひきこもりピアサポーター
ピアサポーターのIさんは40代前半の男性で大学を卒業したときに就職氷河期で苦労されて数年
フリーターをされたあと就職したが、30代で退職しその後10年ほどひきこもった。普段は規則正し