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関心を把握し、それを持ち寄ってプログラムの内容を考えることにした。まだグループに参加してい
ない人もどういうグループなら参加しやすいかを考えることにした。言うまでもないが「歯科衛生講
座」が駄目だということではなく、そのときの参加者のニーズに適していなかったのだ。その一方で
「プチデイケア化」で居場所からプログラムを独立させるという発想自体は良かったので、すべての
グループをその場限りのイベントにして、年間計画表に定められた内容を行うのではなく、毎回あた
かも初めて開催されるかのような案内チラシを作成した。これで「いつも同じような人が集まらない」
とか、「1回限りの参加でもよい」といったメッセージを持たせている。回数は基本的にはその場1
回限りで、3回シリーズのようなものを含めて限定的なものとしてやっている。定期的な形ではない
ところが特徴だ。このようにすると各回のグループは一期一会のような出会いの雰囲気になった。
3-3.個別ニーズに応じたテーラーメイドの企画
テーラーメイドの企画でニーズをどのように把握するかは、ニーズと言いながらも当事者本人には
聞いていない。つまり直接聞いて答えにくい人、聞けない人がいる。「何をしたいの」と親から言わ
れ続けても何も答えられないのにそれをここで聞いたら黙り込んで来てもらえなくなる。聞ける人に
は聞くが、聞けない人には「最近何をしているの」という話からどのようなことに興味がある人なの
かを推測している。またグループワークには参加していないけれど個別相談を受けている人に対して
は、こういうグループなら参加してくれるのではないかと想像して個別担当しているスタッフが集ま
ってKJ法(データをカードに記述し、カードをグループごとにまとめて、図解し、論文等にまとめ
ていく方法)で会議をしている。
このように推測したニーズを考えたうえで案内チラシを作成しているが、そのチラシも例えば、も
のづくりしたい方向けに「羊毛フェルトで馬のマスコットをつくろう」といったもの。講座でもクリ
スマスカードをつくったことがあるが、研修会で実施した絵葉書や飛び出すカードづくりは良いと思
う。ものづくりしたい人もいるだろうし自分のペースで何かしたい人もいるだろう。調理のようにみ
んなで何かをつくるのが苦手でも自分のものを自分でつくりたい人もいるので、そういう方向けにチ
ラシを作成して案内している。外出したい方向けに「○○に行こう」といったチラシを作成するとい
った感じで企画ごとにチラシを作成しているが、これを参加者全員に配らないところがポイントで、
明らかに外出することが嫌な人に「○○に行こう」のチラシは渡さない。細かい手作業のものづくり
が苦手な人にカードづくりをやらせることはしない。それはこちらが推測して渡す時点で人を選んで
いる。
3-4.安心してすべれるプログラム企画
テーラーメイドのグループワークは、一期一会方式で開催しているため、参加者がゼロ人になるこ
とはないのでいろいろと模索を試みた。一つは参加者同士の交流がない講座形式のグループワークの
開催。4人だけで対戦ゲームをするような大衆受けしないことも行う。このやり方は浦河のべてるの
家方式であり、べてるの家の理念に「安心してさぼれる職場づくり」というのがあり、それを模倣し
て「安心してすべれるグループワーク」を考えた。このような企画で開催したグループにはたくさん
の参加者があったのでグループ企画で安心してすべれるがゆえに全体としては最初の失敗のような
ことがなくなってきた。
先ほども述べたように安心してすべれるというのは講座形式で、これは本当にシーンとしていて、
むしろシーンとしている方が良いということで企画している。どうしても専門職や支援者はグループ
というと頭に浮かぶのは話がはずんで交流している状態で「いつも話さない人が2~3人のグループ
の中で話せるようになって良かった」など先入観がある。もちろんそのような状況になったほうが良
い人もいるが、そうしたくない人は参加しにくいということで、あえてシーンとしている。後方に座