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3.サカイ式すべらないグループワーク
ここからは体験談だが、グループワークがなぜ重要かというと、母親との個別相談において「ここ
に来たら何かあるのですか」「本人の話を聞いてくれるだけですか」と聞かれたときに地域に案内で
きる居場所がなかったので「こういうグループがあるんですよ」と答えられたらよいと思った。つな
がるための支援ももちろん大切だが、つながった後に何をするのか答えられる必要があると考えグル
ープワークに取り組んできた。
ひきこもり支援で私たちが難しさを感じながら試行錯誤したのが、サカイ式すべらないグループワ
ーク(以下、SSG)というものだ。当初いつまでグループで遊んでいるのかという問題があった。そ
こで精神保健福祉センター内にひきこもりの居場所支援として「青年活動グループ」をつくった。プ
ログラムは調理とかスポーツとかレクレーションを中心に月2回開催し年間予定表をつくり開始した。
開催すると5名くらいの男性が来てもらえるようになった。和やかな雰囲気でそれはそれで良かった
が課題としては利用者が増えない。初期の参加者がだいたい30歳前後の男性で、そこに合わない人
が参加できないというのが主な理由で、特に10代後半くらいの若い女性がこの中に入れないでいた。
「いつまでも同じメンバーで風通しが悪い」「今のメンバーでいい。崩したくないから」といった
意見が出され話し合った結果「グループの利用期限を決めよう。2年利用したら卒業」といった案も
出されたが、2年経過してもその人の状況が変わらなければひきこもるだけである。それならばグル
ープで遊ぶのをやめて就労準備のプログラムをしてはどうかという提案もあった。しかし常連で来て
いる参加者は就労したいとは言っていないため、グループに参加できるようになったのに来なくなる
かもしれない。
「ともかく工夫が必要だ」ということに気付いた。最初の1~2年目くらいは特定のメ
ンバーしかは入れない状況があり、当たり障りない内容を実施していた。そのためどうやってグルー
プに参加者を呼ぶか議論すべきなのに、どうやって追い出すかを議論するという恥ずかしい状況だっ
た。
3-1.プチデアイケア化の試み
どういう工夫が必要かと最初に考えたのは「プチデイケア化」の試みだった。これは、とりあえず
今までは調理しようというときは一つの部屋でみんなが集り行っていたが、二つの部屋を同時に使い
一つは自由に過ごせる居場所としてゲームとか雑誌とかを置いて開催時間内は出入り自由にする。二
つ目の部屋では「今から1時間は調理をするので、こちらに参加したい方はこちらにも来て下さい」
と呼びかけるといった、外へは出ていきたいけれどプログラムには参加したくない人はとりあえず一
つ目の部屋でのんびり過ごすことができるように選択肢を二つ提供できるようにした。プログラムの
内容に関してもプチデイケア化にしたのだからレクレーション以外もやることにした。居場所がある
のでレクレーションを楽しみたい常連の参加者が持っているニーズだけに答えなくてもよいという
ことで考えた。そこで新しい企画は何するかという話の中で、「歯科衛生講座」を実施することにな
り、隣の部署の歯科衛生士に講座をしてもらうことにした。講座形式なので常連のメンバー以外の若
い女性でも来てもらえると思い、ひきこもりの健康にも貢献できる画期的な企画として自信をもって
開催したがこれが余計なお世話だった。参加者がいなかったため、常連メンバーがいる部屋に行って
講座への参加をうながしたが断られた。利用者のニーズを無視したこちら側の自己満足で行うとこの
ような状況になる。いろんな方が参加者にいるのでこちらの思いで「健康になってほしい」とか良か
れと思ってやったことが押しつけになっていた。
3-2.一期一会の講座形式
そこから方法をSSG方式で行うことにした。要はニーズと企画とのミスマッチがあるという視点に
立って、利用者のニーズを把握するために個別相談を受けている人の話を聞く中でその利用者の興味