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なひきこもりの支援の実践者に話す機会は少なく、多くは公務員として例えば民生委員児童委員にひ
きこもり支援5年やっているという報告させてもらったり、あるいは学会などで心理職の仲間にひき
こもり支援について説明したり、ひきこもり支援に興味関心のない人たちに理解啓発の意味で説明し
てきたので、みなさんからすると物足りない話になってしまうかもしれないが、基本的には私の体験
談だと思って聞いてもらいたい。
私の前職はこころの健康センター、いわゆる精神保健福祉センターだが、そこにひきこもり地域支
援センター業務があとから加わり支援を行っている。私は12年間そこに勤務し2018年4月に人事異
動になった。相談の対象者はひきこもりで困っている15歳以上の方で堺市民に限っている。障害者
手帳を持っている人や病気を持っていることが明らかな人に対してはひきこもり状態であっても専
門機関がすでにあるので、初期対応の時点でそちらを案内している。わからない事例も結構あるが、
そういう場合は継続して相談を受けている。家族に対する個別相談を中心に行い、本人に会える状況
になれば本人に会っていくスタイルをとっている。
今日のテーマであるグループ集団支援の話だが、いきなり集団に入ってもらうスタイルではない。
基本的には全員個別支援をしているなかで、グループに誘っている形になるのでアセスメントとして
本人をしっかり把握したうえで集会に誘うというやり方をしている。相談件数が非常に多くなってい
る。実数が380件で延べ数が5,200件なので継続して何回も相談に来ている。グループワークにもた
くさん人に来てもらっている。
参加者の平均年齢は30歳を超えている。5人に1人は40代以上で4人に1人くらいは10年以上ひ
きこもっている。ひきこもり家族教室など個別相談以外にもいろんなアプローチをしている。手紙に
よる相談は少なくメール相談が多いが、今日は目から鱗というか手紙は有効というか活用していくこ
とで、堺市に帰ったら仲間たちにしっかり伝えていきたい。それからアウトリーチ、本人にどうつな
がるかという話もしてほしいとの要望だったが、手紙はしていない。しかも訪問に関しても原則、家
族相談か本人の来所を目指すというやり方になっているので、いきなり本人の許可なく訪問すること
は基本的にはしていない。
家族相談からどのように本人と会う機会をもつかということを考える意味で、家族や一般市民、民
生委員児童委員にひきこもりを理解してもらうためにテキストを作成している。堺市こころのセンタ
ーホームページからダウンロードが可能なので興味がある方は参照してほしい。
URL http://www.city.sakai.lg.jp/kenko/kenko/hokencenter/kenkocenter/kokoropan.html
2.訪問事例から
訪問した事例を1件紹介したい。Kさんという10代後半の男性のところへ家庭訪問をした。中学に
入学してすぐに不登校になり中学はほとんど登校せず5年くらいひきこもっていた。昼夜逆転になり
自室でテレビを見たりゲームをして過ごしていた。ただある日突然自分の人生が無意味なものだと思
えたようで死のうと覚悟したのだが、自殺は恐くてできないため断食で死ねると思い食事をとらない
という宣言をして本当に食べなくなった。心配した母親が数日後に相談に来た。このケースの場合、
直ぐに訪問すべきという結論に至り、精神科の医師とベテランの保健師と一緒に私は当時勤務1年目
だったが随行した。相談者宅の居間で待っている間、Kさんから「何しに来たんだ」と文句を言われ
ると思ったが、母親に呼ばれて居間に入ってきたKさんが思っていた以上に低姿勢で親和的に接して
くれた。それから話ができるようになっていった。その後しばらく訪問して一緒にパワプロ(実況パ
ワフルプロ野球という野球のゲーム)をやったりしていた。Kさんは非常にこだわりの強く人間関係
が苦手だが、遊戯王カード(トレーディングカードゲーム)に非常に詳しくデュエル(トレーディン
グカードゲーム・デュエルマスターズ)を教えてもらった。