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当事者(家族)、民生委員児童委員を対象としたターゲット調査、さらにはひきこもり当事者10名

を選定した個別ヒアリング調査も併せて行い2019年3月に公表した

(3)

。 

 その調査結果によれば、厚生労働省が示す6か月以上にわたりひきこもり状態にある人は札幌市内

で19,823人(15歳~39歳:6,604人、40歳~59歳:8,128人、60歳~64歳:5,091人)と推計され

た。40歳を超える中高年層のひきこもりが全体の67%を占めひきこもりの長期高年齢化が浮き彫りと

なった。また当事者本人のふだんの外出状況では各年代とも「自分の趣味に関する用事のときだけ外

出する」がもっとも多く、同様にひきこもり期間も各年代とも7年以上が比率的に高く、とりわけ40

歳から59歳まででは全体の50%に達した。 

こうしたひきこもりの高年齢化は就労経験を有するひきこもりが増えたことが大きな要因として

挙げられ、「アルバイト以外の就労経験を持つ事例はほとんどない」

(4)

という指摘がなされた今か

ら20年前には想定していなかったことが今起こっており、誰もがひきこもりになってもおかしくな

い時代となった。 

ひきこもっている本人が高年齢化するという現実は、その支え手である家族も高年齢化していくこ

とを意味する。KHJ全国のひきこもり家族会連合会が経年比較的に行なってきた調査でも50代のわが

子がいる家族世帯の回答者が極端に低くなっている

(5)

。このことからわかるように家族が80代にな

るにつれ家族会活動への参加が難しくなっている。ひきこもりの長期高年齢化は世帯そのものの健康

や生活面への支障、さらには地域とのつながりの消失を招きやすく、社会的孤立問題として広くとら

えていくことが求められている。 

さらに近年はこうした現状が進行していくことで派生するひきこもり8050問題が深刻化しはじめ

ている。親が80代で子ども50代という生涯未婚者で親と同居し続ける8050問題そのものは、ひき

こもり界隈だけに限ったものではないにしても地域で孤立し生命の危機が脅かされていく可能性が

高く、ひきこもり支援をすすめるうえでの喫緊の課題となっている

(6)

。 

 

2.ひきこもり支援策の現状と課題 

ひきこもりに関する施策は1991年から実施されてきた児童相談所が行うふれあい心の友訪問援助

事業(メンタルフレンド)などを盛り込んだ「ひきこもり・不登校児童福祉対策モデル事業」にはじ

まり、2003年の「ひきこもり対応ガイドライン」制定以降は、都道府県・政令指定都市単位の精神保

健福祉センターや保健所などのひきこもり相談窓口対応が強化されてきた。 

しかし2004年頃からニート(

not in education, employment or training

)という用語が広

がるなかでひきこもりが若者支援政策の中に組み込まれ、2006年からの地域若者サポートステーショ

ン事業開始後は、就労支援の位置づけが色濃く示されるようになった。 

そのため就労支援のプログラムなどに移行できないひきこもり当事者や若者支援政策そのものが

原則15歳から39歳までを対象としてきたため、その範疇から外されしまう中高年ひきこもり当事者

が置き去りにされる課題が残った。 

2009年に議員立法として内閣府が「子ども・若者育成支援推進法」を制定。身近な地域ごとに子ど

も・若者支援地域協議会(2018年9月時点全国119箇所、北海道内では北海道、札幌市及び石狩市、

帯広市に設置)をつくり横断的に複合的な課題解決を図っていくネットワーク形成をすすめた。 

また同年厚生労働省が「ひきこもり対策推進事業」としてはじめてひきこもりに特化したワンスト

ップ型の総合相談窓口「ひきこもり地域支援センター(2018年4月時点全国75箇所、北海道内には

北海道と札幌市に設置)

」を開設した。2010年の「ひきこもりの評価・支援に関するガイドライン」

でもひきこもりは第一義的には病気や障害ではなく状態として理解されており、不安や悩みをもった

ひきこもり当事者本人や家族は地域の中でどこの相談窓口に行けばよいかわからないことが多かっ

たため、その相談窓口を明確化することで適切な支援に結びつきやすくすることを主たる目的として