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れば、一日過ごすのもやっとという日もあります。勇気がなくて外に出られないまま一日終わってし
まう日もあります。私は社会経験が一度もないまま、ずっと自立という言葉が頭から離れないで辛く
ています。いまだに自立できない自分はいつもいけないと思ってしまいます。このポポロのニュース
レターを読まれているみなさんにお聞きしたいのですが、自立するとはどのように思われますか。教
えてください」と書かれた手紙が届いた。これはそのままニュースレターに掲載した。読者からいろ
いろと反響があった。その反響もそのまま掲載し対話を行った。レター・ポスト・フレンドの田中さ
んたちがやっている一方通行の絵葉書もあるが、私が意識しているのはこの子と読者多数との関係を
つくることにより、つまり私が何かを述べて人が変わるわけもないし、その人が豊かに生きられるわ
けでもない。できるだけ多くの人とつなぎながら一緒に考えることだと思い実践している。
2-3. 思いを汲み取り課題を可視化する
私たちが当たり前だと思うことができない人たちがたくさんいる。それは過去の経験の蓄積があっ
てのことなのだ。だから丁寧にその人たちの思いを聞きとることが何よりも求められると思っている。
それからもう一つは問題を可視化すること。例えば今月号のニュースレターの表紙にある写真は当事
者の人には配慮が必要だが、もちろん許可をとってできるだけリアルに本人たちの顔や姿を伝えたい
と思っている。
子どもの貧困に携わっていると「日本に本当に貧困な子どもがいるのか」とよく聞かれる。アフリ
カのユニセフがやっているような写真にはリアルに痩せ細った子どもたちの写真がでてくる。でも日
本の子どもの貧困の問題を取り上げるときには、子どもの写真を載せない。そうするとなかなか伝え
きれない。でもこの子どもたちはすでに成人していてこういうところに掲載されることを含めて意志
を持っているわけだから、手紙も匿名で載せることが大半だが、それでもできるだけこういう問題が
社会の中にあることを見せていかないと社会の人たちは気付かない。だから先ほどのようにお化け屋
敷に住んでいる女性の問題は世間の人たちはまず知らない。こういう問題が社会や地域にあることを
誰が知らせるかといえば私たち以外に知らせる人はいないと思う。それが自分たちの役割だと思って
いる。だから社会に何も問題がなかったことにさせないことがとても大事である。
それからもう一つは、私一人だけではないと感じてもらえるその励ましは、本人たちにとても大き
な勇気を与えると思う。だから問題があることをきちんと可視化することを意識してやらないといけ
ないと思う。また私の心の中で思っていることだが、出会ったときに決して出来ないと言わない。先
ほどの女の子がいろんな相談機関やいろんなところを周って相談をしてきた。でもそこで自分のこと
が受け止めてもらえて自分のことを聞きとってもらえた意識が全くない。そうではなくて少なくても
私たちのところでは自分たちは何もできないかもしれないが「あなたのことは決して見捨てないよ」
ということを伝えていくことだと思う。だから結果が良くなるとかという問題ではなくて、制度につ
なげられたかどうかではなくて自分は見捨てられずにずっと付き合ってもらっているということが
とても大事である。だから自分一人で抱え込まないことも大切だが、同時に絶対にその人のことを見
放さない、見捨てない、とことん寄り添うことが重要である。
2-4. 葉書を持ち歩き時間があるときに送る
私は外出するとき普段かばんの中にいつも葉書を持ち歩いていて少しでも時間があると書く。大し
たことではない、2~3分で書ける。喫茶店に入ると5~6枚は書ける。名簿を持ち歩いている。今私
が毎月出している人たちは60人くらいいる。住所と名前さえわかれば基本的に送れる。何月に出し
たこともメモをとってあるので月に1回送るようにしている。ニュースレターは毎月郵送しているの
で2~3か月出せなくても大丈夫。だからそれだけでよい。何かの手違いでニュースレターが届かな
いと見捨てられたと思ってしまう人たちがいる。とても難しいことではなくて見捨てないということ