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きて俺に結婚できないんだよ」といってきた。結婚の記事を見せるとそのときは3人くらい読者が減
った。それくらい結婚の問題というのは当事者にとって大きな課題である。この夏は暑かったので「大
丈夫だったか」と尋ねると、4階建てのアパートの2階に住んでいてエアコン壊れたので、扇風機と
窓と廊下のドアを開けっ放しにして「何とかやってきた」という。岐阜は暑いところなので大変だっ
たが、私が出会った頃は窓もカーテンも閉めてしまい、ほとんど開けない生活を長くしていたので「え
らい進歩じゃないか」といっていたが、またひきこもるという生活をしている。
次のケースは40代後半の女性で今は50代になっているが、この方からプロパンガスのボンベをガ
ス会社が交換できないので雑草を刈り取ってくれないかと連絡があった。見に行ったらガスボンベど
ころか家の前の庭には私の身長より高い草が覆い茂っていた。本人は20歳頃からひきこもっていて
両親は既に亡くなっている。一人暮らしのため庭掃除も植木の手入れもできなくなり地域では「おば
け屋敷」と呼ばれている家に住んでいる。みんなで草刈と庭木の剪定にでかけけるためニュースレタ
ーで呼びかけた。そうしたら10人くらいの子たちが集まってくれた。しかも私が会ったことがない
ひきこもりの若者たちが結構多くいた。それはびっくりしたことの一つだった。結局ガスボンベは取
りだすことができた。生垣も切れるだけ切り、つる草も屋根の上にまで生え登っていたので、そうい
うのも全部取り払って半年くらいかけて毎月2~3度出かけて作業した。このときにひきこもってい
た人たちに、お金にはならないが「出番」をつくるといった。自分も役に立てるかもしれないと思っ
ている人が多くいることが理解できた。だから「出番」をつくることが大事だと思った。
そのようなことでひきこもっている人たちの問題がいくつか見えてきた。経済的に困窮しているケ
ースが少なくない。先ほどの一人暮らしで庭の掃除をした人は法的な手続きは何もできずに相続がで
きていない。だから親名義の貯金が下ろせない。自分名義の貯金を切り崩していた。実際の月々の生
活費をみると2万~3万円で生活している。しかもとても難しいと思ったのは生きる意欲がない。つ
まり欲望が枯渇している。食べることを含めて意欲がなくなっている。この当事者の場合スーパーや
コンビニでビニール袋に入ったうどんを買ってそれを普通に食べるのではなく、ビニールの袋の先を
少し切って電子レンジにかける。温かくなったら切り口から醤油を少しさしてそれを食べていた。何
故料理しないのかを尋ねたらゴミを捨てられないという。地上波デジタル放送に変わった時点でテレ
ビを見ることができなくなり乾電池式のラジオがあるが乾電池が捨てられずに困っていた。時々はラ
ジオを聞くようなので私たちのところからラジオは提供した。また座布団を敷いて寝ていたため布団
や衣類も提供した。
その後、私たちの仲間の女性が買い物に同行した。何度か同行してもらい近所に居場所をやっている
ところがあったので、そこにつないだ。次第にそこで働いているボランティアの人と仲良くなって結婚
した。結果として結婚もできて現在はお化け屋敷といわれた自宅も出てアパートで二人暮らしている。
2-2. 手紙や絵葉書を活用した支援
A県に住む女性には絵葉書送っている。自分の部屋で私が送ったはがきを写真に撮って一緒に送っ
てくれたこともある。絵葉書のお礼が書いてあって後半には「毎日苦しくて辛い日々です。夜は両親
の食事の音や声を聴きながら2階で一人過ごしています。今は夜中の少しの時間以外はテレビを見る
こともほとんどできません。食事を美味しく味わう余裕もありません。栄養がとれなくても普通に温
かい食事をとりたいです。一日中辛いですが天気の日は一層辛いです。今は周りに弱音を吐ける人も
いません。とにかく人に臨機応変にうまく合わせられません。本当は生きて幸せになりたい」と書い
てあった。幸せになりたいという気持ちはとても大事なことだと思う。生きる意欲そのものが枯渇し
てしまっている人が多い中でこういう気持ちは凄く大事にしていきたい。
手紙やはがきを使った支援でいうと、B県に住んでいるKさんから「時々過去のいろんなことを思
い出しては苦しくなり具合が悪くなって生きていることが辛くてもうだめだと泣けてくることもあ