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複雑に変化する状況の記述は、専門職のみの見解で行われるのか。③新しい状況への個別の対応判断

は実践者のみでおこなうのかという質疑である。 

 

5-1.不自由を解き放つ協同的関係性にみる専門性 

みなさんが取り組まれるピア・アウトリーチは、自身の体験を語り直す取り組みではないだろうか。

それは、「セラピストが知らなかったことに反応して、語り手が記述し直し、説明し直すこと」が可

能となり、

「両者は影響しあいながら共に進化する」

(H.アンダーソン)。この語り直しのなかで、実

践者と当事者が共に影響しあい共に進化することが可能となる。また、この語り直しは、協同的な問

題解決を可能とする。 

H.アンダーソンらが「クライエントによって語られた個人史を根拠にして新たな意味を生み出し

てゆく共同作業」の下で、「人生に新たな意味と理解をもたらし、新たな主人公が登場する物語」が

展開し、新しい未来が切り開かれると述べているが、ここで取り組まれる共同作業のなかで、当事者・

実践者・地域住民が相互にアセスメントを行い、相互の課題を追求し、

「当事者としての」

「家族とし

ての」「実践者としての」「地域としての」語りを丹念に仕上げ直し、“一人称で語られる物語の内容

を変化させ”

「我々の人生・実践・地域(社会)

」を創り上げるのである。 

 

5-2.協同的問題解決の「戦略」を追求する「装置」の創造 

ピア・アウトリーチは、その共同作業そのものであり、協同的問題解決の「戦略」が追及する「装

置」の創造を可能とする実践ではないだろうか。 

その実践は、「専門家として援助を与える者」対「不適格で援助を受ける者」という構図に常に疑

問を投げかけ克服するものであり、ピア・アウトリーチでは、実践の質(実践の場のミッションや哲

学、当事者の主体性保障、アウトリーチ等にみる侵襲性の有無)に関するアセスメントを実践参加者

が集団として行う努力を行い、個々がひきこもりと対峙するために実践体が護られ、安全が保障され

る制度の創造に取り組む必要がある。さらに、ひきこもりのみではなく、地域社会でスティグマとの

対峙を計画的にめざすことが、その実践において追求されるのではないだろうか。 

運営されるピア・アウトリーチの集団は、実践に参加する当事者の自由裁量が保障され、当事者の

参加が強要されず、その場から抜け出ることが保障されている場でなければならない。また、どのよ

うな実践内容の展開が可能であるのかを検討し、実践参加者が参加しプランを立てることができ、実

践体が自治的に運営されることが必要であろう。 

 

 

6-3.講義Ⅲ-古くて新しい『文通』という試みでつながった若者たち  

~手紙、はがきによるひきこもり支援の可能性 NPO法人仕事工房ポポロ代表 中川  健史 氏