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復させる。その実践過程のなかで、双方の主体が育ち合うのではないだろうか。
4-2.協同的問題解決と出会いの局面
双方の主体が育ちあう出会いの局面であるが、この局面で実践者が当事者(仲間)と出会い,ほん
の数回の相談を行い、「あなたの強さ,可能性はここだ」と伝えることが可能だろうか。もしそれが
できれば、それは実践者の傲慢ではないかと思う。その傲慢な実践者に「この人に,自分の気持ちが
解るのだろうか」「資格をもっているらしいが、この年端のいかない者が私と一緒に悩んでくれるの
か」という思いをもって当然だろう。
窪田暁子が「自分の言い表しがたい気分に共感を持って接してくれる、安心できる、好感の持てる
相手の眼の中に映っている自分と出会うことによって、人は自分自身を見直すことを学ぶ」と述べて
いるが、これは、実践者、当事者双方にとって言えることではないだろうか。出会いの局面が「好感
の持てる眼」のなかに自身の姿が映り安心でき、自身を見直すことができる双方の関係性を創り上げ
る局面にならなければいけないのではないだろうか。
4-3.ピア・アウトリーチと危機介入
次に、ピア・アウトリーチと危機介入について考えてみよう。そもそも危機介入とは、脆弱性が高
まり家族の危機が生じたときに、できる限り早期に介入し、決定的な危機を招くことを防ぐために行
う介入手法である。
この危機介入は、場合によっては、命との関わりが生じるときには、侵襲的な介入を必要とするこ
ともある。ただ私は、この危機介入においても、協同的関係性は必要であると考えている。まず、当
事者の危機と出会ったピア・アウトリーチャーは、緊急アセスメント会議を招集することであろう。
その緊急アセスメント会議において、ピアスタッフは、アセスメント対象者である当事者のアドボケ
ーターとして参加することが必要ではないだろうか。そこでは、危機介入が必要以上に侵襲的な方法
とならないかを確認するとともに、その当事者と家族がもっている力を伝え、適切な介入を提案する
役割を果たすことが求められる。
さらに危機アセスメントにおいて、度重なるアウトリーチを危機介入方法として決定したときには、
何がストレスとなり危機を招くこととなったのかを正しく分析し、アウトリーチのなかで、当事者や
家族が以前から持っていた課題解決の力を知る必要がある。さらに危機を招いたとき、手助けとなる
インフォーマルを含める支援者の存在について分析することが必要だろう。
当事者は危機的な状況を確実に察知し、必ずしも他者による効果的な介入を自身から願い出るもの
ではない。ただ、生活上の困難が生じたとき、駆け込むことができる場が自身の近くにあればどうだ
ろうか。その場が、危機を一時的に回避できる場であり、そこで、安心できる「仲間」が日々の実践
を行っているならば、当事者は危機と意欲的に向き合うかことが可能になる。
またその場が、地域の実践者の組織化を効率的に行う核となるならば、それは、危機介入の「装置」
として機能することになる。その危機の回避を行うことができる場は、個々の危機への介入から普遍
的な地域生活のニーズを組織化する。
5.協同的関係性と専門性
協同的関係性は、実践者、当事者が相互に不自由から解き放たれるために必要な関係性であり、そ
の関係性のなかでこそ、プロ・ピア双方の専門性が育つのではないだろうか。
バーレットは、専門職と職業を区別する特色の一つに専門的判断があるという。この専門的判断に
ついて、実践的な質疑を行う必要がある。
それは、①当事者と実践者は、その新しい状況をいかに探りあうのか。いかに提示し合うのか。②