本事業の目的
厚生労働省は2013年度から「ひきこもり対策推進事業の拡充」として「ひきこもりサポーター養成研修事業」を導入しました。
しかし、ここで期待された役割は「訪問支援」であったために当事者への負担感が強くさまざまな課題が指摘されてきました。
そこでひきこもり当事者とピアサポーター双方に無理のなく接点をもつことが可能な「手紙を活用したピア・アウトリーチ開発事業」に取り組みました。
現在のひきこもり支援
ひきこもりは、学齢期から大人、さらには壮年期まで幅広く存在する現象です。
ひきこもり支援は、それぞれのライフステージに沿ったきめ細かな対応が求められ、 在宅生活が中心のひきこもり当事者に対する施策はこれまで充分に検討されてきたとは言えません。
多くは就労支援の名のもと、とかく画一的な支援になってしまって個々のひきこもり当事者のニーズをしっかりと汲み取るものにならなかった反省点が求められます。
手紙の中の絵葉書に着目
在宅のひきこもり当事者と接点をもつツールはインターネットの普及によって電子メールやSNS、ビデオ通話などチャンネルも多様化したが、 当NPOはあえてアナログの手紙、しかも絵葉書に着目してそれを活用したピア・アウトリーチを行いました。
なぜ、絵葉書に着目したか?というと、絵葉書は片面に送り先の当事者宛名と送り主がコメントを添え、もう片面をイラストや写真という言語と非言語とが コラボレーションする利点があります。
相手に伝える情報は必ずしも言葉だけではなく、言葉には現れないもののほうが伝わることが結構多いのです。創意工夫を凝らしたイラスト、写真などにはその人 のこころが投影されることも多く、視覚的な伝達手段をもつ絵葉書に着目する意義は大きいです。
絵葉書によるピア・アウトリーチの流れ
ひきこもり当事者本人に対して希望者を広く募集します。家族が申し込む場合は最低限の同意を必ず本人から得ます。
ひきこもり経験的知識を有するピアサポーターが個人名で毎回オリジナルの絵葉書を作成します。見返りを求めず緩やかに月2回の頻度で郵送します。
事業を振りかえって
NPO法人レター・ポスト・フレンド相談ネットワーク
理事長 田中 敦(Atsushi Tanaka)
絵葉書ぐらい誰でもできるだろうという安易な考えでは続けることはできないと思われます。実働したピアサポーターが一度も会ったことのないひきこもり当事者一人ひとりの思いを考え、絵葉書に託す実践に不安や悩みはつきものです。
大切なことは、そうしたゆらぎをもつピアサポートの営みは相互支援であり、ピアサポーターもひきこもり当事者とともに悩みながら少しずつリカバリーしていくことです。
「支援をしたい」「困っている人の役に立ちたい」といった「支援をして差し上げます」的なスタンスはピアサポートの方向性とは異なるものです。自分の経験値がすべての当事者に当てはまるものではありません。ピアサポートは当事者を尊重し裏方に徹する活動を通して有効となっていくものと考えます。そのことを真摯に受け止め決して無理はせず、自分の価値観を自己覚知したうえで当事者とともに歩むピアサポーターとしての活動を実践していきます。